よゐこの有野晋哉さんがレトロゲームに挑戦し、収録時間内に完全クリアーを目指す“有野の挑戦”などでおなじみのゲームバラエティー番組『ゲームセンターCX』。同番組が2003年11月4日の放送開始から19周年を迎え、いよいよ20周年イヤーに突入する(ただいまCSフジテレビONEにて隔週木曜24時~25時に放送中!)。

 20周年を迎えるにあたって、11月4日には“20th公式YouTubeチャンネル”が開設されたのを始め、11月11日にはお菓子“コボチ”とのコラボ商品が発売、ライオンとのコラボによる“有野課長の冷えピタ”の発表(2023年2月28日発売予定)など、続々と展開が控えている。さらに、12月16日には『ゲームセンター CX DVD BOX19 』がリリース予定だ。

ゲームセンターCX 20th チャンネル

 そこで今回有野課長こと、有野晋哉さんにインタビューを実施。『ゲームセンターCX』の19年を振り返りつつ、20年目に向けての展望を語っていただいた。

有野課長が語る、20周年イヤーに突入した『ゲームセンターCX』での日々。“ゲームへの挑戦”は修行!? ファンにエンディングを届けるために
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『ゲームセンターCX』公式サイト

最初はインタビュー番組だったものが、いつしかゲームの挑戦がメインに

――『ゲームセンターCX』がいよいよ20年とのことで、おめでとうございます。20年というと本当に長い年月ですが、始まったころはどのような感じだったのですか?

有野課長最初はクリエイターインタビューがメインの番組でした。そのときは『ゲームセンター「CX」』ってCXにカギカッコがついていたんですよね。うちの前に同じスタッフで『週刊少年「」』っていう、船越英一郎さんがいろいろなマンガ家さんと話す番組をやっていて、その流れで『ゲームセンター「CX」』が始まった形です。

 1時間番組でひとつのゲームメーカー縛りで1回目はタイトーでした。『スペースインベイダー』を作った西角さんと、『たけしの挑戦状』作った人は見つからなくって、攻略本作った人のところへ。

 でも、そのインタビューだけじゃ60分は持たないから、ちょっと有野がゲームに挑戦する、『たけしの挑戦状に有野が挑戦』みたいなミニコーナーをやるってなって。放送は10分ぐらいかなあ。最初は短めやったんですけどね。最初の10回分、各ゲームメーカーさんを回って最後に任天堂に行かしてもらって。

 終わるころに「つぎ、有野の挑戦だけで10回分やります?」って聞かれて、「じゃあやりましょか」ってなり、メインやったクリエイターインタビューがなくなって、ゲームの挑戦だけになったってところですね。

――最初はインタビュー企画として番組がスタートしたんですね。11回目から“有野の挑戦”メインになったのは、番組内で有野さんのゲームプレイが好評だったから、ミニコーナーが大きくなったということなんでしょうか?

有野課長好評やったんかな。制作が見てて1時間見てられるなって感じはったのか、知らんけど。ミニコーナーだったときは、いまみたいに1本のソフトをクリアーまでやるっていうんじゃなくて、たとえば「『スターフォース』で16連射でラリオスを撃破」とか、「大画面で『鉄騎』やってみたい」とか1ステージもクリアーしてなかったんちゃうかな。

 それくらいのをちょびっとやって、2時間ぐらい収録したら、「ちょっと回しすぎましたね、すみません!」みたいな感じで。それがいまの1本のソフトをクリアーを目指す企画に変わってからは、クリアーできるまでは14時間とか経っても帰してもらえない。クリアーできなかったら、ファミコンとソフト持って帰って、つぎまたおんなじ挑戦です、って言われるっていう。最初はゲームクリエイターのインタビューですよ、って聞いてたのに騙された形で19年続いてますよ(笑)。

――(笑)。いつの間にか10時間拘束がふつうになってしまったのですね。

有野課長そうですね(笑)。インタビューは最初の10回だけで、第2シーズンからはずっといまの感じですね。たまにスペシャル回として対談を持ってくるとかはあったけど。もうそれもない。『週刊少年「」』の再開を船越さんが待ってはらへんかなって思います。

――(笑)。番組を作る側としてはインタビュー以上に有野課長がゲームプレイをする姿におもしろさ、可能性を感じていまの流れになったようですね。

有野課長いいように言えばね(笑)。ファミコン時代のクリエイターに全部会っちゃったんじゃないですか。そんなことないか。当時の有野主任に可能性を見出したんでしょうね。課長への昇進は当時としては早かったもんな。

――(笑)。

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DVDが売れて、初めて番組に人気があることを実感

――最初は1シーズン10回だったわけですが、そこから番組がここまで続くとは思っていらっしゃいましたか?

有野課長思ってないです! 番組が始まってても、CSやから視聴率があるわけでもないし、人気があるかどうかはぼくのほうではわかってなかったんですよ。でも「つぎ、どうします?」って話をされたのは第2シーズンが終わるときだけで、それからそういう話はしてないですね。そのときは「第3シーズンをやるなら、ゲームは10本中7本はあります」って言われて、「じゃあ見切り発車やけど、おもしろそうやからやりますか」って(笑)。

――(笑)。番組が始まってからの反響で覚えていらっしゃることはありますか?

有野課長アトランチスの謎』(第2シーズンの1回目)が放送された後にやった収録のときに、スタッフから「2ちゃんねるですごい数のスレが立ちました。7000スレです」って言われたのは覚えてますね。それを全部プリントアウトしたものを「読みますか?」って渡されたんですけど、「読まない! でもええこと(感想)が書いてあるの?」って聞いたら、「すごい好評です!」って言われて。

――たぶん番組を見ながらの実況(書き込み)がすごかったんじゃないですか。当時はTwitterがなかったですし。

有野課長その時代ってCS番組の人気を計る指針がなかったから、「へぇ~、すごいんや」ぐらいの感じでしたね。むしろ、最初はフジテレビの会議室を収録部屋と楽屋で2個も使ってたのが、途中でひと部屋になって、さらに経費削減なのか、フジテレビじゃなくて制作会社の会議室に変わったんですよ。西日のキツい部屋でした。そのときには「あー、この番組いよいよ終わるな」って覚悟しましたね。

――(笑)。

有野課長フジテレビの会議室を押さえるお金がなくなったんだって(笑)。でも実際は好調だったらしくて、会社がちょっとずつ大きいところに引っ越していったりもして。

――課長の心配とは裏腹に、番組は黎明期からわりと好調だったんですね。

有野課長みたいです(笑)。

――いずれにせよ20年続いているフジテレビのCS番組ってほとんどないですよね?

有野課長見栄晴さんの競馬番組(『競馬予想TV!』) や、(地上波時代を含めた)『THEわれめDEポン』とかあるんじゃないですかね? 見栄晴さんのほうが長寿番組だし、『THEわれめDEポン』は収録じゃなくて長い時間生放送でやるし、向こうのほうがすごいと思ってますね。こっちは細々とやってきた感じ。

 でもDVD化はしたほうがいいって、「どこか作ってくれへんかな」みたいな話をスタッフとしてて、ぼくはぼくで所属してる事務所の松竹芸能に聞いてみたんですけど、無理やわって言われて(笑)。制作会社のほうでいろいろ動いてもらった結果DVD化できて、それが売れて、そこで初めて番組が人気あるって、自分の中でも視聴者的にも認知できたんじゃないですかね。それが嬉しくって握手会とかもさせて貰ったりしたんかな。

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『ときメモ』をプレイして、“有野の恋愛哲学”を語る!?

――番組が続いていくなかで、ご自身のプレイをどう見せていくかみたいなことは考えていましたか?

有野課長つねに考えてはいますね、って言いたいけど。自然にゲームをやってる感じですね。難しいステージは3時間とか平気でかかってしまうし、それを編集で遊ばれてる感じですね(笑)。

――編集で有野課長のよさがより濃く出ているということですか?

有野課長そう (笑)。ぼくはただただ声に出してゲームをやってるだけで、家でやってるときよりは口に出すようにはしてますけど、それをうまいこと見やすく、おもしろくしてくれてるのは担当ディレクターなんでしょうね。

――声を出す以外は家と同じ感覚でゲームをプレイしているのですか?

有野課長あ、違うわ。家だったら1日何回もソフトは入れ替えますし、同じソフトを丸一日もやらない(笑)。

――(笑)。編集による見せかたで印象に残っている回はありますか?

有野課長ときメモ』(『ときめきメモリアル〜forever with you〜』)の回です。めちゃイケで結婚を発表した直後で、スタッフに「けっきょく、めちゃイケですか? こっち有野さんメインやのに!」って怒られながら、もともと挑戦するはずだったソフトの代わりに「コレやってください」って渡されましたね。藤崎詩織に告白されるっていうのをやったんですけど、会話シーンやイベントを見ながら、「これは違うで」とか、「約束して前日に断るのがいいね」って、女性への接しかたをしゃべってたら、編集で“有野の恋愛哲学”になってました (笑)。いま考えても恥ずかしい。

――あれは有野課長が恋愛哲学をまとめたわけではなく、編集で生まれたものだったんですね。

有野課長そう。ただしゃべってた感じが放送では恋愛哲学になってた。「バッサバッサ口説いてきましたからねー」とか(笑)。

――なるほど。編集で感心させられることも多いんですね。

有野課長『ときメモ』の回は恥ずかしかったですよ。今回、やけにスタッフが聞くなーって思ってた(笑)。

――(笑)。とはいえ、演者と作り手どうしのいい関係は築かれている感じですね。

有野課長そうですね。スイスイ泳がされてます。

――関係性がよくないと、長時間の収録ですし1回1回の仕事がだいぶしんどくなりそうですよね。

有野課長でしょうね。多少ゆるい感じでやっていかないと持たないですよね。昔はカメラマンの阿部さんしか起きてない回があって、スタッフ全員寝てるとか、挑戦中にイビキが聞こえてくることもありますね(笑)。僕もウトウトしてる回もあった。

――長時間収録ならではのアクシデントで印象に残っていることはありますか?

有野課長古いゲーム機だから不具合は多かったですね。ソフトにちょっと説明書が当たっただけで画面がバグったり。止まっちゃって進めないとか。VE(※)の須田さんがソフトの接触部分をマイナスドライバーでガリガリガリ! って削って挿し直したらできたりとか。絶対マネしたらあかんやつ(笑)。

※VE……ビデオエンジニア。映像関係の仕事で、ビデオカメラや各種映像機器の調整や設定などを行う。

――ゲームがどうしても動かなくて、収録が中止になったことはありますか。

有野課長中止はないんちゃうかな。『超兄貴』はPCエンジンが熱持って動かなくなって、別の日に再挑戦したけど。あと(ファミリーコンピュータ)ディスクシステムのソフトで入れ替えのときに固まっちゃって、時間的に戻せないから続きは別日にってこともありましたね。

――やはりアクシデントは日常茶飯事というか……。

有野課長40年前のゲーム機で収録ですからね。やりたいソフトがあっても許可が取れないとか。ソフト自体が見つからなかったり、高すぎて買えなかったり。ここまで来たら持ってる人が「課長のためなら」って貸し出してほしい! 借りパクはしないから(笑)。

――入手のしやすさやアクシデントを防ぐ意味で、いまのハードで昔のゲームが遊べるサービス、たとえばNintendo Switch Onlineだったり、ミニスーパーファミコン、メガドライブミニに収録されているゲームを遊ぶ……といった選択はされないのでしょうか?

有野課長ないでしょうね。レトロゲームの実機を使って、見てるほうは気にしてないと思うけど、当時のコントローラーでゲームをするっていうのが番組のポリシーやから。いまもこれからもオートセーブ機能がない、戻し作業をやらせたいんでしょうね。だから、昔のゲーム機を使ってやっていくんです。僕的には初めにソフトをふっ!て吹きたいので。

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エンディングを見ていないユーザーに見せてあげたい

――お答えしにくい質問だと思うのですが、いままでで一番印象に残っているソフトは?

有野課長今回のDVD-BOX19の特典の『メタルギア ソリッド』ですかね。

――うまいこと話題を振っていただいてありがとうございます(笑)。

有野課長(笑)。『メタルギア ソリッド』は独身のときにゴリゴリ家でゲームしてた時期のソフトやったから、「これもう解いた(クリアーした)し、何周もやってるから余裕やで!?」って言いながら始めたんですよね。ゲームがとにかく楽しくて、飲みに行くのもやめて家でずっとゲームしてた時期やから、みたいな話から始まって、「俺が覚えてる情報を全部書く」って言って進めていくんですけど……あ、気になる方は見てください。

――いざ始めていくといろいろなドラマが発生すると。ちなみに『メタルギア ソリッド』は課長の希望で今回プレイすることになったんですか?

有野課長いや、ぼくから「〇〇をやろう」って言ったことは一度もないですよ。毎回現場で「今回挑戦するソフトは〇〇です」って聞く感じですね。

有野課長が語る、20周年イヤーに突入した『ゲームセンターCX』での日々。“ゲームへの挑戦”は修行!? ファンにエンディングを届けるために

――なるほど。通常の放送回で印象に残っているゲームは?

有野課長魔界村』かなあ。40~50代の人はみんな知ってるゲームやけど、エンディングは見たことないというのがあって。この番組で「そういえば『魔界村』のエンディングを初めて見たなあ」って、当時を思い出したっていう人たちの話をよく聞いたので。やってる僕はめんどくさくてしょうがなかったですけどね(笑)。

 ぼく当時小学生で、やってるときはレッドアリーマーで「難しい!」ってやめてた。それぐらいの思い出しかないのに、「6面までクリアーするのは無理、行けるわけないやん!」ってね。それでクリアーして、「やったー!」って言うてたら、「これは夢だった」って、2周目が始まる。スタッフに「どうしますか?」って聞かれて「これ以上やったらゲームが嫌いになるよ」って言って帰らせてもらいましたね。で、真のエンディングはADの笹野にクリアーしてもらって。

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――でも逆に『魔界村』の1周目をクリアーするまでゲームをやらされる負荷には耐えられると?

有野課長もっと長くやってるゲームもあるんじゃないかな。DVDにも入ってる『キャプテン翼II』(『キャプテン翼II スーパーストライカー』)なんかは収録に3日かかってるしね。丸3日はたいへんでしたね。あと試合の実況をずっと音読してるから、トリップしだして(笑)。GKの若島津くんがボールを止めるときの「キエエ~ッ!」は読んでて楽しくて、途中から「キエエ~ッ!」はストレス発散になってましたね。

――ゲームプレイというか、修行みたいになってますよね。

有野課長それぐらい高尚なもんですよ(笑)。みなさんにエンディングをお届けするためにやってますから。

――(笑)。視聴者、ファンのためにゲームをプレイしているという面が強いのですか?

有野課長自分がエンディング画面を見たいというよりも、当時やってたけど、エンディングを見れてない皆さんにお見せするんだっていうのと、エンディングまで行かれていないソフトの供養です。

 でも本音は、課長がクリアーしないとスタッフが帰れないから(笑)。「終電までには終わるんだ!」って思いながらいつもやってます。それでも間に合わなくて、プロデューサーから「お時間です」って強制終了させられる。そんな日は帰ってから、「エンディング出されへんかった!」って悔しくって眠れないですね。嘘。クタクタですぐ寝てる。

イベントでのファンの声援が力になる

――収録の長時間におよぶゲームプレイはなかなか苦労されていると思うのですが、逆にイベントで挑戦する一発勝負には強い印象があります。たとえば幕張メッセのイベント(ゲームセンターCX 15th感謝祭 有野の生挑戦 リベンジ7番勝負)の『スーパーマリオブラザーズ2』のジャンプとかは成功させてらっしゃいますし。

有野課長あれは緊張しましたね。でも7番勝負全部は勝ててないけど、『メルヘンメイズ』でかなり盛り上がったから全体的に勝ったって印象になってるんじゃないですかね。ぼくも『メルヘンメイズ』で全部チャラになったとやってて感じましたけど(笑)。お客さんがいるほうが力を発揮できるっていうのはあるかもしれないですね。ふだんの挑戦部屋やと、「ごめーん!」って言いやすいけど、挑戦部屋が幕張メッセの場合はね、そうはいかない。『お時間です』も延長したいもないですから。みんなが課長を信じてる。汗かいてやるしかない。

――イベントは客席側もけっこう熱くなりますよね。失敗しても成功してもけっこう声が上がるのが印象に残っています。見ている側も手汗をかきました(笑)。

有野課長みんなの声を聞くと元気が出て後押しされる感じはありますね。ゲームが停滞したら「課長、緊張して(ゲームをやって)!」って子どもの声が聞こえたり(笑)。やっぱり、レスポンスがあると楽しいですよね。クリアーすると立ち上がる人もいますしね。自分がやってないからこそ逆に力が入るところもあるんでしょうね。

――独特のファン層が作られていますよね。

有野課長そうですね。イベントが終わったあとにぼくの話をしている人はいないらしいですからね。松竹のスタッフが観に来て、お客さんといっしょのタイミングで帰ったらしいんですけど、「有野のイベントやのに誰も有野の話をしてない。おもしろいイベントやな~」って言ってました(笑)。みんなゲームの話をして帰るんですって。「あんときはああやったよな」っていう、ゲームの話ばっかり。当時の自分の話や、そのときのゲーム事情だったり、自分たちがゲームをやってた時代に戻るんがええんかなあって。

――とはいえ有野課長だからお客さんが集まるのであって、そこにはなにか理由があるのだと思います。

有野課長いや~、本田翼ちゃんやったらもっと集まりますよ!(笑)。立ち上げからのスピードが違うと思いますよ、YouTube始めて1周年でさいたまスーパーアリーナでしょ。「そんな短期間でそこでできるの!?」って思った。こっちは10年で集まるのかなってドキドキしながら武道館、15年で幕張メッセですよ。若い子の勢いには負けますよ(笑)。ただ、こっちも長くやってるぶん、負けてられへん。信頼と実績と奇跡でやってますから。

――10周年の武道館(ゲームセンターCX 有野の挑戦 in 武道館)のときと比べると、15周年の幕張だったり、オーケストライベント(ゲームセンターCX シンフォニー)だったり、客席に親子揃ってのお客さんが増えましたよね。幼稚園ぐらいの小さいお子さんが有野課長のコスプレをしてたり。

有野課長DVDを出した最初のころから東名阪とか福岡とかいろんなところでイベントをやったんですけど、そこでファンと話す内容が年々変わってましたね。「恋人ができました」から「結婚しました」、「子どもができました」って移り変わっていくのも楽しかったですね。イベントで知り合ったご夫妻がいる話も聞きますし。

有野課長が語る、20周年イヤーに突入した『ゲームセンターCX』での日々。“ゲームへの挑戦”は修行!? ファンにエンディングを届けるために

――イベントもですけど、コロナ禍の前は海外ロケも定期的に行かれていた印象があります。そちらのほうでも思い出深いエピソードがあれば教えてもらえますか?

有野課長印象に残ってるのはロシアかな。カンボジアとかベトナムはゲームが普及してないから、コピーゲームみたいなのが多いんですよね。1本のカセットの中にいろんなゲームのコピーが1000本入ってるソフトがあったりとか。試遊させてもらったら、1個のソフトをステージごとに分割してるんですよね。いまで言うステージセレクトになるのかな。でも同じステージもあったりして。オンラインゲームを1時間何円かで時間貸ししてるゲームセンターがあったりとか、そういうのを見るのは楽しかったです。

 アメリカ、フランス、ロシアみたいな国に行くと、その国独自のゲームがあるんですよね。ロシアは、ソ連時代の古いゲームが遊べる場所があって、そこに置いてるゲームが変わってました。射的みたいなライフルで撃つゲームと、潜水艦のゲームがほとんどで。その潜水艦のゲームでも、いっぱい違う種類があったりして、どれも微妙に違うんですよね。アメリカのコインゲームやと、お金入れた、クリアーケースの中の荒野のジオラマに風が吹く、それだけのゲームがあったり。「なにこれ?」やねんけど、そういう文化に触れるのもおもしろかった。

 オタクの人も多いから、「課長が来ますよ」って告知したら何百人か集まってくれる。そこに集まる人は日本のオタクと変わらなくて。ちょっと違うのは筋肉ムキムキの人が日本より多い(笑)。あとゲームのタトゥーを入れてる人とも会ったかな。ロシアではカービィやリンクのタトゥーを入れてる人がいましたね。ただタトゥーを彫る人がカービィを知らないからなのか、カービィがグニャっとしてる(笑)。「見てくれ!」って腕やお腹を見せてくれるんですけど、元のゲームのキャラとはちょっと違う感じで。まあ、公式なのはないからしょうがないけど。

――公式なのはなさそうですね(笑)。

有野課長あと『ゲームセンターCX』という番組のおかげで、海外で日本の文化を伝えるようなイベントにはよく出させてもらいましたね。ロシアのときだったら、オーケストラの公演にゲストで招待されて、日本のゲーム音楽の紹介を担当して。獅子舞とかアニメ音楽を紹介する声優さんとかといっしょに出してもらったりしましたね。それは楽しかったですね。ゲストやのに交通費は番組持ちやったみたいでしたけど(笑)。

――(笑)。

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60代、70代になっても『ゲームセンターCX』は続けたい

――20周年企画の話もうかがいたいのですが、まずはコラボ商品について教えてもらえますか? 冷えピタとのコラボが初なのは正直意外でした。

有野課長僕も驚きました。確かにオフィシャルとしてやってくれはったのは、「長くやってきてよかったなーっ」て思います。ずっと「課長の冷えピタみたいなんを作れたらええね」という話はしてたからうれしいです。

 最初は収録が長引くと頭がぬくく(熱く)なって、集中力が落ちてくるから貼ってたんですけど、シーズンが進んでくると定着して、握手会での差し入れでいただくようになって、幕張メッセでは持参してもらって、ゲームの進行が止まったらお客さんもいっしょに貼るようになって。みんな“貼る”っていう作業が好きなんかな。「『ゲームセンターCX』きっかけで受験のときに冷えピタを貼ってました」って話も聞きますし。でもそもそもは風邪引いて発熱したとき用やのにね。公式に認めてもらった感がうれしい。

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――ほかに20周年だからこそやりたい企画って考えていたりしますか?

有野課長何もしたくないですね、ははは(笑)。気づいたら過ぎててほしい。でも何かしら、色々動いてる気配はしますよ。知らんふりしてますけど。この記事を読んでる人も発表されるのを待ってはったらいいと思います。僕はそうしてます。

――そういえば、YouTubeも始動しましたね。

有野課長いまはCSだけじゃなくて、テレビ自体を見る環境がない若い人も多いし、昔見てくれてた人でも、就職やらいろいろで見なくなって、『ゲームセンターCX』がまだ続いてるって知らない人もいると思うので。有野“係長”って書かれてるツイートをいまだに見たりね。「もう課長やねん!」って思いながら(笑)。なので、本田翼ちゃんに「コラボしてほしい!」って言いたいけど、我慢してます。

――昇進してからだいぶ経ちますよね(笑)。

有野課長番組の現役感を出すために、みんながよく見るところ、テレビ以外のプラットフォームってどこやろうって考えたときに、YouTubeだったんじゃないですかね。TikTokやインスタはスタッフが怖がったのかな(笑)。

――YouTubeのチャンネル開設にあたって抱負というか、こうしていきたいという展望があれば教えてもらえますか?

有野課長YouTubeでは過去の放送をランダムに流していくみたいです。1個の挑戦も何回かに分けて、1本のが見やすいのはわかってるけど、番組は月2回放送なのに、YouTubeが週2回配信って考えたら、それは限りある資源やからね、小出しにさせてほしい。DVD化されてない回も流れたりするのかな。

 生配信もするみたいで、今年もクリスマスパーティー的な配信はやるみたいです。去年はスタッフだけの配信やったけど、今年は課長もパーティーにお呼ばれしました。クリスマスイブに(笑)みんな家おるんかな? 外で見てもらえるんかな。船上でやってるからみんなは橋の上から見られるような、そんなのはないかな。

――駆り出された先でいきなり有野の挑戦が始まったりするのかしら。

有野課長どうなんやろう。19年やってきてて、スタッフといっしょに内容を詰めるっていうのは1回もやったことないんです。去年は発売されたDVD見ながらコメンタリー的なのをやりたかったみたいやけど、関係ない話してたみたい。みんなでボードゲームやるだけかもしれない。スタッフといっしょにダラダラ何かやって楽しむ配信になるんじゃないですかね。僕はNintendo Switchを持っていって、隠れてポケモンのレベル上げやってるかもしれん。隠れて有野の挑戦やってるかも。

――20年モチベーションを維持する秘訣みたいなものはありますか?

有野課長プライベートのゲームプレイで根を詰めないのがコツかもしれないですね(笑)。ふだんのゲームは1時間もやらなくなったけど、ボスやっつけるのに2週間かかってたりもする。でも挑戦部屋に入ったら、1本のソフトを味がなくなるまでプレイする切り替えがコツかな。

――すごい個人的な話になるんですけど、自分は『ゲームセンターCX』が20年続いているあいだに20代から40代になったんですけど、老眼が始まっちゃったんですよ。

有野課長(笑)。いいじゃないの。番組グッズで老眼鏡も売りましたので、ぜひどうぞ。

――老いとゲームの向き合いかたにコツみたいなものってあります?

有野課長Switchだったら携帯よりはテレビの大きな画面でやったほうがピントが合うね。しょうがないから受け入れて、あとは4年に1回視力は下がるらしいからちゃんと検査して。携帯の文字も恥ずかしがらずに大きくしたほうがいいですよ。ってこれ何の話?

――老眼が始まってから有野の挑戦を見ると、改めて「有野課長ってすげえなっ」て思ったんですよ。

有野課長でしょ?(笑)。番組グッズでマッサージボールを作ってほしいなあ。最終的には14時間取り替えなくても大丈夫って、大人用紙オムツまで出したいですね(笑)。挑戦中に、「あ、出た」とか言うて。

――(笑)。そこまで考えているということは、50代が終わって60代、70代になっても『ゲームセンターCX』は続けていくつもりでいるのですね?

有野課長そうですね、続けられる限りは。「有野さん、寝ちゃダメですよ!」って言われながら、「寝てへんよ」ってやりたい(笑)。番組が終わるとしたら、フジテレビから「お疲れさん」って言われるのか、ぼくが不倫をしたらじゃないですかね。老眼ぐらいじゃ終わらない(笑)。

――お話を聞いていて、うかがいたくなってしまったのですが、もはやライフワークのようになっている『ゲームセンターCX』って、有野課長にとってなんですか?

有野課長仕事です。1回聞かれたことあるんですよ。24時間生挑戦で『レミングス』をやったときに、生放送が終わってから会場のお客さんと『ドラクエ』のすれ違い通信をやってたら「有野さん、まだゲームやるんですか!?」って言われて。「あっちはビジネス、こっちはプライベート!」って答えましたね(笑)。だから『ゲームセンターCX』は仕事です。仕事じゃなかったら投げだしてるゲームもあったし。それでもクリアーまでがんばった。ご覧の皆さまにエンディングを見せることが仕事なので。

――責任があるということですね。最後に20周年に向けてのメッセージをお願いします。

有野課長DVDが19本目を迎えました、ということで番組は20周年目となります。課長は50歳、いまだに現役でやっております。忘れているかもしれませんが、ゲーム実況の祖です(笑)。

――そうですよね。

有野課長YouTubeやニコニコ動画のゲーム実況はすべてぼくから始まっております。誰も言ってくれないんで本人が言っております。課長の集中力も足腰も弱ってます。でも、みんなの応援があればまだ走れます。有野課長を推してくださいっていうのを太字でお願いします(笑)。

有野課長が語る、20周年イヤーに突入した『ゲームセンターCX』での日々。“ゲームへの挑戦”は修行!? ファンにエンディングを届けるために