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「ハイドライド・スペシャル」の発売日に関する確認調査、そして情報提供のお願い (その2)

2023年4月5日 記事公開。


こんにちは。
 りんど ( Twitter ID : Lindberg1999 )でございます。
 
 2月13日に『「ハイドライド・スペシャル」の発売日に関する確認調査、そして情報提供のお願い』という記事を投稿しました。

 色々な方から反応が有り、情報もご提供いただきました。本当にありがとうございます。今回はその2ということで前回記事後からこれまでをまとめてみたいと思います。

提供いただいた情報

 以下の雑誌や書籍に明記されている情報について教えていただきました。
 
(1) 小学館「月刊コロコロコミック」 1986年3月号
    1986年2月15日頃に発売。「3月発売予定」と書いてあるそうです。
  参考:まんだらけ


(2) 旺文社「中一時代」1986年5月号
  特別付録「名人がずばりコーチ! ファミコン・ゲーム
       最新ソフト完全攻略」

  参考: まんだらけ

 発売日についての記述は無いようですが、「エンジェル・ブルー」が同時発売と記載されているとのこと。メインプログラマーの加藤英治さんが「加藤師範代」として登場してるそうですが、加藤さんが雑誌に単独で出てくるのは珍しいかもしれません。

(3) 徳間書店インターメディア「超絶 大技林 ‘95年夏版」413ページ
  参考: 駿河屋

(4) 徳間書店インターメディア
  「プレイステーション対応 CD-ROM版 超絶大技林 ‘99年夏版」
  付属CD-ROM収録データベース

  参考: 駿河屋

(5) アンビット発行/徳間書店発売「超絶大技林 2011年秋完全全機種版」
  64ページ

  参考: 楽天ブックス

 (3)~(5)までいわゆる「大技林」シリーズ。その内「2011年秋完全全機種版」は前回の記事でも取り上げた文化庁の芸術メディアデータベースにも一次資料とされている書籍です。これらは全て発売日は1986年3月18日と記述されているとのことでした。

(6) 三才ブックス「ファミ・コンプリート 下巻」
  2003年発売
  参考:駿河屋

 8ページに発売日が3月18日と記述されているとのことです。

(7) 主婦の友社「ファミコン コンプリートガイド デラックス」
  2019年発売
  参考:主婦の友社

 52ページに発売日が3月18日と記述されているとのことです。こちらは新刊で入手可能なようなので、その内手に入れてみようかと思います。

(8) アスキー「ゲーム年鑑 1983-1986」(アスキームック)

 こちらは前回の記事を書く時点では入手することができていませんでしたが、記事公開の時にも情報をいただきました。最近入手しましたので改めて確認しました。
  編集:ファミコン通信編集部
  構成:キャラメル・ママ
  発行日:1992年5月7日
  発行所:株式会社アスキー
  雑誌コード:63596-19

アスキー「ゲーム年鑑 1983-1986」 表紙(表1)
アスキー「ゲーム年鑑 1983-1986」 裏表紙(表4)

 ハイドライド・スペシャルは209ページに掲載されており、ページ右上に
「■’86年3月18日」と有りました。

(9) 当時のテレビCM。
 Youtubeに動画が有ります。15秒の映像で一番最後に
   「「ゲーム革命の日 / 3月21日 / TOEMILAND /
    ©1986 T&E SOFT🄬 / TOSHIBA EMI」
と記述があるのを見て取れます。3月21日に発売することを示しているのだろうと思われます。

記述の相違と矛盾

 さて、提供いただいた情報を列挙してきました。今回と前回の情報をまとめて考えるに少なくとも1990年以降に発行された資料は「3月18日」で統一されているのだろうと推測しています。すべての資料を見ることが出来ている訳ではありませんが、これら1990年以降の資料はこれからは除外して良いのではないかと今のところ考えています。
  一方で1987年発行の資料をあまり見られていないことも考えると、1989年以前の資料に注力した方が良いのではと考えています。また、そう考えるに至ったのは以下にご提供いただいた情報を知ってからです。矛盾を知ることになりました。

(1) 雑誌「コンプティーク」1986年6月号

 Twitter ID:naporitanPG さんから角川書店の雑誌「コンプティーク」1986年6月号に、3月21日に行われたチャレンジ大会の記事が掲載されているという情報をいただきました。そこで原本を入手して確認しました。
  発行日:昭和61年6月1日発行(毎月1回1日発行)
  号数・巻数:第4巻第6号 通巻第18号
  発行所:角川書店
  雑誌コード: 13977-6

コンプティーク 1986年6月号 表紙(表1)

 表紙は当時アイドルとして活動していた志村香さん。現在は芸能活動をされていないようです。

コンプティーク 1986年6月号 裏表紙(表4)

 裏表紙はスクウェア(のちのスクウェア・エニックス)のファミコン版「キングスナイト」の広告です。
 
 この号の120ページから123ページにわたって「そふとくりーむ新聞」というコーナー記事が有り、工画堂スタジオさんへのインタビューやパソコンゲームの隠れキャラやバグを公開するなどの記事が有ります。その中にハイドライド・スペシャルの記事が有りました。

ハイドライド・スペシャルの発表会へいったぞ!
 
 3月21日に東京・銀座は三越の屋上でひらかれた、ハイドライド・スペシャルのチャレンジ大会へいったのだ。当日は、ゲームの発売初日ということもあって、デパートの開店前から人がならぶという盛況ぶりで、小学生を中心に2000名以上の少年たちが参加した。
 イメージソングを歌っているちわきまゆみさんが司会を担当し、T&Eのデザイナーの内藤さんとプログラマーの加藤さんによりゲームの紹介がなされ、その後20台のモニターにより1人5分間の大チャレンジ大会が行われた。

©KADOKAWA CORPORATION 雑誌「コンプティーク」
1986年6月号(通巻18号)122ページ

 この記事は「ハイドライド・スペシャル 大チャレンジ大会」を取材した記事で、以前調べた「月刊少年ジャンプ 4月特大号」(1986年4月号)などに掲載されているものと開催日・会場が一致しています。又ちわきまゆみさんが登壇すること、ファミコン20台が用意されるということも一致しています。
 記事中に「当日はゲームの発売初日」と書かれており、3月21日に発売が開始されたと汲み取ることが出来ます。

 基本的に雑誌の発売予定日が掲載されるのは直前の号で、それに該当する1986年5月号を持っていない筆者は確認できないのですが、この6月号によると7月号の発売日は6月7日と書かれており、おそらくこの6月号も1986年5月7日頃に発売された可能性が高いと思われます。それを踏まえると記事執筆の時期はおそらく1986年3月末から1986年4月の間に執筆されていると考えるのが妥当ではないでしょうか。

(2) 新聞「ゲームマシン」1986年4月15日 第282号

 コンプティーク6月号の記事を見せていただいた方は独自でゲームの発売日を調べているそうで、そのリストをご厚意で見せていただくことができました。本当にありがとうございます。
 
 リストの中で注目したのが新聞「ゲームマシン」です。
「ゲームマシン」紙はアミューズメント通信社が1974年より月2回発行していた業界紙です。印刷物としては2002年に休刊しましたが、Webに移行して情報を提供し続けてきました。しかしながら、2022年10月15日号を最後にWebの更新も終えていらっしゃいます。

 それよりも3年前の2019年6月1日よりオニオンソフトのおにたま氏等によって印刷物として発行されていた号がアーカイブとして公開されるようになりました。ちなみに実物は国立国会図書館と立命館大学で閲覧することが出来るそうです。

 先のリストを見せていただいた方によってこの「ゲームマシン」紙も調査されており、ハイドライド・スペシャルの発売日に関して掲載されている号を当方も確認しました。 

任天堂「ファミリーコンピュータ」 ここまで増えたゲームソフト
ファミコンソフト105種

(中略)
ジャイロダイン        3/13 ㈱タイトー
ハイドライド・スペシャル   3/18 東芝EMI㈱
マグマックス         3/19 日本物産㈱
バルトロン          3/19 東映動画㈱
タッグチーム・プロレスリング 4/2  ㈱ナムコ
(後略)

©アミューズメント通信社 新聞「ゲームマシン」1986年4月15日第282号14面

 「ゲームマシン」紙の4月15日号には、発売日が3月18日である、と記載されていました。発売から1か月経過していないタイミングで、それまでのチラシや広告に掲載されていた発売予定日の3月21日と違う発売日が掲載されていることになります。
 
 ちなみにこのファミコンソフト記事一覧には以下のような解説が掲載されています。

上の表は任天堂「ファミリーコンピュータ」用ゲームカートリッジ(1種はディスク)を発売順に並べた一覧で、4月2日までに同社を含め計22社から105種が発売となっている。(以下省略)

©アミューズメント通信社 新聞「ゲームマシン」1986年4月15日第282号14面

 つまり、この一覧は1986年4月2日までに発売されたファミコンソフトのゲーム名・発売日・メーカーを並べています。「ゲームマシン」紙は前述したように月2回の発行で発行日は1日と15日でしたので、前号の第281号は1986年4月1日発行ということになり、前号発行日の次の日までに発売されたソフトが一覧に並んでいることになります。
 この記事が完成するのは1986年4月2日以降ということになりますが、それまでに発売されたソフトの発売日は事前調査で可能でありますので、この一覧の作成開始は4月2日より前であっても問題ではありません。いずれにしても発行される4月15日までの4月中には記事は完成していることになります。

(3) 両資料の比較

 コンプティーク誌とゲームマシン紙の資料を改めて比較してみます。
 
 ・「コンプティーク」誌 1986年6月号 
   1986年5月7日頃発売。記事執筆はおそらく1986年3月21日~4月中。
   ハイドライド・スペシャルは3月21日発売と汲み取れる。

 ・「ゲームマシン」紙 1986年4月15日号
   記事完成は1986年4月2日以降~4月15日までの間。
   記述によるとハイドライド・スペシャルの発売日は3月18日発売。
 
 つまり1986年3月の発売からそう遠く無い時期にも関わらず、3月18日・3月21日と記述している(汲み取れる)資料が有り、矛盾が生じてしまっていることになります。これが単なる誤記ならそれだけで済む話です。しかし、おそらくメーカーである東芝EMIもしくは任天堂に発売日に関して取材をしていると思われるので「誤りではなく正式に提供された情報」であるならば、「3月18日」は何かしらの意味を持つことになります。T&E SOFTを外しているのは、T&E SOFTは今風に言うデベロッパーで有り、販売権は東芝EMIに有ると考えているからです。つまり、東芝EMIはパブリッシャーで発売に関する最終判断をする権利を持っているはずです。 

あとがき

 この矛盾を説明するには、それに伴う理由を見つけないとなりません。よく言われるのは「3月18日は出荷日ではないか?」と言われるものです。日本全国のゲームショップに商品を届けるには時間が掛かるので、たしかに発売日に店頭に並べたいと思ったらそれよりも前に生産工場から出荷しないとなりません。しかし、現状では「3月18日=出荷日」と説明できる資料を見つけられていません。おそらく内部資料なので個人が閲覧することは難しいんでしょうが……。
 
 ここまで来て調査続行に少し壁を感じてもいますが、それでも粘り強く続けていきたいと思います。何かしら情報がございましたらご連絡ください。特に東芝EMIや当時の問屋・小売店に関係していた方々のお話を聞いてみたいと思っています。どうぞ宜しくお願い致します。
 
 最後に、「ゲームマシン」紙をアーカイブとして無償で公開される決断をされたアミューズメント通信社様、アーカイブ公開の為の作業とサーバーを提供していただいているオニオンソフト様に謝辞を申し上げます。本当にありがとうございます。また、多くの情報を提供いただいたTwitterの方々も、改めてありがとうございます。重ねて謝辞を申し上げます。
 




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