「データ容量」で読み解くビデオゲーム史

40年間で530万倍にも増加したデータ容量、その時代ごとの特徴を整理する

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ビデオゲームが必要とするデータ容量は、年を追うごとに増加しています。『Call of Duty』シリーズといったAAAタイトルともなると、100GBを超えるものも珍しくありません。ゲーミングPCや現世代機は、大容量(PS5・Xbox Sereis Xの場合で1TB)のストレージを備えていますが、ある程度まとまった数のゲームをインストールしようとすると、すぐに一杯になってしまいます。

今回は、「データ容量」に注目して、ビデオゲームの歴史を整理します。データ容量がどのように増大してきたか、そして時代ごとにどういった特徴があるかを示します。

この記事では、1980年代初頭から現代(2023年)までを、「ROMカセット期」「光学ディスクメディア期」「ダウンロード販売期」の3つに区分します。ただし、3つの時代ははっきりと区分できるものではなく、以下の図で示す通り、互いにオーバーラップがあります。

本記事で3つに区分する各時期の年代を示す図。実線矢印は主流期間を表し、点線は黎明期および主流から外れた時期を表す。

それでは、まずは「ROMカセット期」の最初に時間を戻して、その歴史を紐解いてゆきましょう。

ROMカセット期:容量は「5年ごとに10倍」に

ゲームのメディアとしてROMカセットが主流であった1990年代半ばまでは、ゲームのデータ容量は、その時点で利用可能なROMカセットの容量によって規定されていた時期と言えます。

「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」のローンチタイトルである『ドンキーコング』(1983年)は、わずか24キロバイト(192キロビット)のROMカセットに収められていました(注:当時はデータ容量をキロビット・メガビット単位で表記していましたが、本記事では現代の一般的な表記であるキロバイト・メガバイト単位に換算します。以下同じ)。

ファミコンのローンチタイトル『ドンキーコング』(画像は『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』版をキャプチャ)

ROMカセットはその後、しばしば「ドッグイヤー」とも呼ばれる、短いスパンで繰り返される半導体の集積・微細化技術の恩恵を受けて、その容量を飛躍的に増大させてゆきました。それは「毎年○%増し」といった直線的な増大ではなく、一定期間ごとに倍々で増えてゆく、指数関数的な増大でした。

下に、主要なゲームシリーズのROMカセット容量の推移をまとめた図を示します。なお、ROMカセット容量の急激な増加をうまくグラフに表すために、縦軸を対数で表示しています。

スーパーマリオ、ドラゴンクエスト(DQ)、ファイナルファンタジー(FF)、ゼルダの伝説のROMカセット容量の推移。(出典:Wikipediaにおける各タイトルの記事項目)

この図によると、ROMカセット容量はおおむね「5年ごとに10倍になる」という傾向が読み取れます。

1985年の『スーパーマリオブラザーズ』の時は40キロバイトだったROMカセット容量は、1990年の『スーパーマリオワールド』にて、その10倍の約0.5メガバイトに到達しました。そして、5年後の1995年に発売された『ドラゴンクエストVI 幻の大地』では、さらにその約10倍である4メガバイトのROMカセットが採用されました。そして、2000年の『バイオハザード2』(NINTENDO64版)ではついに、64メガバイトの大容量ROMカセットを用いることによって、PlayStation版(CD-ROM2枚組)の移植が実現しました。

大容量のROMカセットといえば、アーケードと遜色ないゲームを遊べることをウリにした「NEO GEO」も押さえておくべきでしょう。「100メガショック(※単位はメガビット)」という宣伝文句や起動時の「MAX 330 MEGA(※こちらも同様に、単位はメガビット)」という表示は、その大容量ぶりを前面に押し出したものでした。ただし、その分コストが高く、ソフト1本の定価は3万円程度と、家庭用ゲームソフトとしてはかなり高額に設定されました。

「NEO GEO」のキャッチフレーズ「100メガショック」(画像は「NEOGEO mini」公式サイトからキャプチャ)

NINTENDO64以降、21世紀に入ってからも、ROMカセットの系譜は、PlayStation VitaやニンテンドーDSといった携帯機や、Nintendo Switchにおけるゲームカードとして継続しています。利用可能な容量も数GB〜数十GBに到達していますが、2000年代以降は、据え置きコンソールにおけるメディアの主流としては、次に示す光学ディスクへとその座を明け渡すこととなりました。

光学ディスクメディア期:540MB(CD-ROM)から100GB(UHD Blu-ray)へ

光学ディスクメディアの登場は、ゲーム機が、ROMカセットとは比べ物にならない大容量を安価に取り扱うことを可能にしました。

最初にCD-ROMを採用した「PCエンジン CD-ROM2」(以下CD-ROM2)が発売された1988年当時は、ROMカセットの容量は1メガバイトにも満たないものでした(『スーパーマリオブラザーズ3』が約0.38メガバイト)。それに対し、CD-ROM2が利用可能な容量は約540メガバイトにおよび、当時のROMカセットの約1000倍の容量を実現しました。当時のCD-ROMドライブは等速読み込み(150KB/秒)であり、読み込みの速さでは依然としてROMカセットに優位性がありました。しかし、半導体を用いて製造されるROMカセットに対して、プラスチックの板に凹凸パターンを焼き付ければよいCD-ROMは製造が容易で、短期間に安く大量に作ることができました。

PCエンジン CD-ROM2。画像は韓国語版Wikipediaから引用(SACHEN at Japanese Wikipedia, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons)。

その後、1990年代前半のいわゆる「次世代ゲーム機戦争」の時期に、CD-ROMドライブはゲーム機に標準搭載されるようになりました。そして、新たな機種が発売されるたびにその時点の最新規格を取り込み続け、現在では、PS5とXbox Series Xにおいて、容量100GBを誇るUltra HD (UHD) Blu-rayディスクが利用可能になっています。

以下の表では、これまでにゲーム機に採用されたことがある光学メディアとその容量、採用ゲーム機の代表例を示しています。

1990年代、CD-ROMがゲーム機に標準搭載されたことに後押しされて、ゲームのデータ容量は大きく増大しました。それは主に、あらかじめ生成されたムービーを収録するために使用されました。(例を挙げると、ファイナルファンタジー(FF)シリーズでは、「FF6」は3メガバイトのROMカセットに収められていたのに対し、「FF7」はCD-ROM3枚組、「FF8」と「FF9」は4枚組に達しました。そして、多数のムービーが収録され、物語を彩りました)。

以降も、ビデオゲームが、豪華なグラフィックやサウンド、より緻密で広大なゲーム世界の表現など、より大容量を必要とする方向へと進化したことに後押しされて、ゲーム機が採用する光学ディスクメディアのデータ容量も増大してゆきました。

また、光学ディスクメディアを採用したことによる副次的な効果として、ゲーム機が映像視聴機器として訴求されるようになりました。その代表例は、2000年に発売され、DVDビデオ再生機能を有していたPlayStation 2(PS2)です。2000年当時、DVDプレイヤーは10万円を超えるのが当たり前だった時代に、PS2が39,800円で登場したことのインパクトは大きく、同時期に発売された映画『マトリックス』のDVDは大ヒットしました。

さらに、PS3およびXbox 360のローンチ期であった2005〜2006年には、両機種が次世代ビデオメディア規格(Blu-rayとHD-DVD)の代理戦争の場として使われたこともありました。結果的にはHD-DVDは撤退し、Xbox 360用の外付けHD-DVDドライブは、ほとんど活用の場を与えられることなくフェードアウトしていきました。

Xbox 360向けHD-DVDプレイヤー(画像はWikipediaから引用)。

現代においても、大容量のデータを供給する手段として、光学ディスクメディアは依然として優位性を保っています。しかし、2010年代以降、ゲーム供給の主流は、徐々に次に述べるダウンロード販売へと以降してゆきました。

ダウンロード販売期:『Call of Duty』のデータ容量は17年間で20倍以上に

家庭用ゲーム機におけるダウンロード販売の歴史は意外と古く、メガドライブの周辺機器「メガモデム」のサービス「ゲーム図書館」(1990年)という実装例があります(個別販売ではなく、月額800円の会費制)。また、PCでは、インターネット黎明期(1990年代)から、個人制作ゲームをシェアウェアとして販売する文化があったほか、2003年には「Steam」がサービスを開始しました。

ゲームのダウンロード販売における初期の例である「セガ・ゲーム図書館」告知チラシ。右側下段(赤枠囲み部分)に月額料金の記載がある(セガ公式「セガハード大百科」から引用)。

家庭用ゲーム機において本格的なダウンロード販売が始まったのは、第7世代機(Xbox 360・PS3・Wii)の登場(2005年〜2006年)以降のことでした。当初はデータ容量の少ない(数百メガバイト)小規模作品がラインナップの中心でしたが、2009年にXbox 360向けに「ゲーム オン デマンド」サービスが開始されるなど、2010年前後からパッケージ版と同一のソフトがダウンロード販売にラインナップされるようになりました。

以下の図で、2005年以降にゲームのデータ容量がどのように増大していったのかを示します。ここでは、短いスパンでコンスタントに作品が発売されている『Call of Duty』シリーズと『Assassin’s Creed』シリーズを例に挙げています。

『Call of Duty』および『Assassin's Creed』シリーズにおけるデータ容量の推移。値はXbox米国版のものを採用し、Xbox 360 Games on Demand販売ページおよびXboxダウンロードソフト販売ページにおける各タイトルページから取得した。

いずれのシリーズでも、データ容量は2005年から2022年までの17年間で約20倍に増え、100GBを突破していることが分かります。『Call of Duty』シリーズは、2005年の『Call of Duty 2』(5.27 GB)から2022年の『Call of Duty: Modern Warfare II』(121.2GB)で約23倍、『Assassin’s Creed』シリーズは、2007年の『Assassin’s Creed』(6.56GB)から2020年の『Assassin's Creed Valhalla』(120.03GB)で約18倍になりました。

『Assassin's Creed Valhalla』(画像は公式サイトより)

データ容量は、第7世代(PS3・Xbox 360)から第8世代(PS4・Xbox One)へ切り替わったタイミングで、特に顕著に増加しました。そのことを示すため、以下の表では、同一タイトルにおいて、オリジナル版と、リマスター版もしくは同時発売された縦マルチ上位版のデータ容量を比較しています。

縦マルチ上位版とリマスター版、いずれの場合でも、次世代版の方が数倍〜10倍程度データ容量が大きいことが分かります。発売2年後の2017年に「Xbox One X Enhanced」アップデートが行われた『Rise of the Tomb Raider』(Xbox One版)のように、発売後にデータ容量が増加する場合もあり、そのことが、両世代のデータ容量の差を広げています。

なお、上記のグラフや表によると、PS4およびXbox Oneの登場以前(2013年ごろまで)のデータ容量は、DVDのデータ容量(約8GB)の範囲内に収まっていました。これは、今回の調査をXbox 360のストアで行ったことが主な理由です。Xbox 360はDVD機だったので、必然的にそのデータ容量はDVDの容量未満になったと考えられます。

一方、PS3はダウンロード版が発売されていないタイトルが多いため、一律には比較できませんでした。それでも、『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』(PS3版:11.7GB、Xbox 360版:6.63GB)などPS3版の方が容量が大きいタイトルが存在したほか、『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』(26.7GB)など、PS3専用ソフトには、20GB以上の容量を持つものも存在しました。

ただし、上記のような事情を考慮しても、PS3・Xbox 360時代は数GB〜10GB未満がほとんどであったデータ容量が、2014年以降、一気に数十GBの単位の世界に移行したことは間違いないと考えられます。その背景には、これだけのデータ量を現実的な時間でダウンロード可能な、ブロードバンドインターネットが世界的に普及したという事情もありました。

もちろん、全てのゲームが上で挙げたような数十GB~100GB越えのデータ容量を持つわけではありません。小規模なインディー作品や「アーケードアーカイブス」作品など、容量が小さいものも存在します。PlayStation 4(PS4)のゲーム容量を調査した記事によると、PS4ソフト1987本の中で、約3割にあたる607本はCD-ROMに収まる容量(700MB未満)だったそうです。

このように現代は、容量の少ない小規模なソフトから100GBを超える超大作に至るまで、データ容量に大きな幅があり、多様化している時代だということができます。

まとめ:40年間で530万倍。増加するデータ容量とそのゆく末

今回は、ゲームの「データ容量」に注目して、ファミリーコンピュータ(ファミコン)が発売されてからの約40年間で、どのくらい増大してきたのか、その歴史を整理しました。ファミコンのローンチタイトル『ドンキーコング』(1983年)が24キロバイトだったので、2022年の『Call of Duty: Modern Warfare II』(121.2GB)と比較すると、そのデータ容量は約530万倍になったことになります。

この記事では、「ビデオゲームの面白さの進化が、その驚異的なデータ量増大に見合っているかどうか」という議論には踏み込みません。ただ、現実問題として、ストレージを圧迫し、多数のゲームを同時にインストールすることが困難になっている点は無視できません。特に、Xbox Series X|Sでは「クイックレジューム」によって瞬時に別のゲームに切り替えることができるため、その影響は深刻です。

「Xbox Cloud Gaming」に代表されるクラウドゲームは、その解決策の一つといえます。クラウドゲームであれば本体ストレージを圧迫することなく即座に遊べます。ただ、ゲームの品質が通信環境に左右される問題があります。将来的には、例えば必要なデータがその都度サーバーから本体ストレージにキャッシュされるなど、ネイティブアプリとクラウドを融合させた形の技術が一般的になるかもしれません。

ビデオゲームの表現力が向上し続けている以上、今後もデータ量が増大してゆくことは避けられないと感じます。その時、プレイヤーに不便さを感じさせることなくゲームを楽しませるために、どのような解決策が出てくるか、今後の発展が楽しみな分野だと思います。

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