村上皓亮・ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス最高投資責任者(CIO)写真:YFO提供

任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が、海洋土木の東洋建設に株式公開買い付け(TOB)による買収を提案した。前田建設工業などを傘下に持つインフロニア・ホールディングスが進めていた東洋建設へのTOBに待ったをかけた形だ。YFOの最高投資責任者(CIO)の村上皓亮氏が、初のインタビュー取材に応じ、運用方針などを明かすとともに、東洋建設に買収提案に踏み切った理由を語った。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

故山内溥元社長から受け継いだ資産を運用
使命は「挑戦を次代に紡いでいくこと」

――富裕層の資産を運用するファミリーオフィスでもあるヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)は活動実態などがベールに包まれてきました。

 まずYFOの成り立ちについて説明したいと思います。YFOは任天堂を世界的な企業に押し上げた中興の祖である故山内溥元社長から受け継がれた資産を運用しています。代表は溥氏の孫に当たる山内万丈氏です。

 約130年前に創業した任天堂はもともと花札製造会社でした。創業者から3代目に当たる溥氏は若いころから多角化に取り組み、ホテルやタクシー事業にも挑戦したこともあります。

 そうした挑戦を繰り返した挙句に何度か会社を傾かせたこともありましたが、最終的に、50代でゲーム機を開発して世界的な成功を収めました。粘り強い挑戦によって開花させたのが溥氏だったのです。

 その溥氏が13年に亡くなりました。溥氏の遺言により、巨額の遺産を継承したのが溥氏の3人の実子と、孫に当たる万丈氏です。血縁的に孫でありながら、溥氏と養子縁組が知らずになされていたのです。

 万丈氏にとっては青天のへきれきで、巨額の遺産が自分の身を滅ぼすかもしれないという恐怖を覚えていたそうです。その後、祖父がなぜ財産を自らに遺したのか悩み抜いた結果、一時的に自分が預かったものとして、「山内家のスピリットである挑戦を次代に紡いでいくこと」が使命だと思うに至ったのです。挑戦の歴史をつなぎたいという万丈氏の思いによってYFOは立ち上げられました。

――1000億円以上を運用するともいわれています。どのような運用をしているのでしょうか。