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ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から2年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

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「反戦」のはずがロシア擁護? “嫌韓”に似るウクライナ批判の左翼

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ロシアのウクライナ侵攻に反対する在日ロシア人による反戦デモで「ロシア人も戦争反対」と声をあげる人たち=東京都渋谷区で2023年2月25日、和田大典撮影
ロシアのウクライナ侵攻に反対する在日ロシア人による反戦デモで「ロシア人も戦争反対」と声をあげる人たち=東京都渋谷区で2023年2月25日、和田大典撮影

 ロシアのウクライナ侵攻開始以来、日本の社会運動や知識人らの一部に、ロシア擁護論やウクライナ批判があります。なぜこうなるのか? 今の情勢で反戦運動は何を主張すべきなのか? 学生時代からさまざまな運動に関わり、開戦後はウクライナの左翼団体への支援活動をするノンフィクション作家、加藤直樹さんに聞きました。【聞き手・鈴木英生】

ウクライナ批判を始めた左翼の友人たち

 ――加藤さんは、侵略に抗しつつ労働問題などに取り組むウクライナの左翼団体への募金活動などをしました。

 ◆ウクライナの左翼団体「社会運動」を支援しようと思った元々の理由は、驚きと怒りです。開戦後すぐ、SNS(ネット交流サービス)で日本の左翼や平和運動系の友人たちが何人も、ウクライナがいかに腐敗したひどい国かを言い立てつつロシアを擁護し始めました。侵略されている側を非難する姿勢に仰天し、怒りを覚えたものです。米露でもどの国であっても、侵略をした側を批判すべきなのに、なぜ今回は簡単に「反侵略」の旗を降ろすのかと。

 さらに、ロシア軍の前に立ちはだかる市民たちの姿を報道で見たり、ウクライナの左翼活動家が体制の変化に翻弄(ほんろう)されてきた自らの家族史を語る文章に、民衆の複雑な歴史を垣間見たりしました。これは自分が東アジアについて学んできたこととつながっていると思うようになりました。

 植民地支配からの解放と独立や、民主主義確立の過程では、社会や政治体制に激しい矛盾や葛藤が巻き起こります。抱え込んだ傷とも向き合わなくてはなりません。ウクライナの人々もまた、他民族支配の歴史を克服して自らのネーション(国家)をつくる歴史の困難を背負い、闘ってきたのです。

 翻って、ロシアを擁護するようなウクライナ批判は、一部の右派などの「嫌韓」言説に似ています。…

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