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直木賞逃したNEWS加藤シゲアキさん「母の故郷の秋田、なんでこんなに知られていない」

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 第170回直木賞の選考会が17日行われ、作家でアイドルグループ「NEWS」のメンバー、加藤シゲアキさん(36)が秋田を舞台に描いた小説「なれのはて」(講談社)は惜しくも受賞を逃した。加藤さんは昨年12月、読売新聞の取材に応じ、「秋田という歴史がなければ書けなかった作品。運命的な出会いだった」と語っていた。

土崎空襲知る

 作品は、ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動したテレビ局員が、作者不明の絵で展覧会を開くため、謎の画家の正体を探る物語。調査はやがて、秋田のある一族や、1945年8月に秋田市土崎地区で起きた土崎空襲へとつながっていく。

「なれのはて」への思いを語る加藤さん(昨年12月27日、東京都文京区で)
「なれのはて」への思いを語る加藤さん(昨年12月27日、東京都文京区で)

 加藤さんが秋田をテーマに作品を手がけるのは、今作が初めて。戦争を題材に取り上げようと、なにげなく母の故郷である秋田市を調べると、終戦当日に空襲があったことや、原油の産出地であったことを知ったという。「なんでこんなに知られていないんだろう、知った以上は書かなきゃ、と思った」と振り返る。

 土崎地区に関する資料などを読み込み、空襲や、明治末期から県内で盛んになった油田開発について調べた。作中では、物語の鍵を握る土崎空襲の場面や、原油の採掘シーンも描かれる。

 秋田弁の表現は、自ら調べたり、県内に住む親戚の話し方を参考にしたりした。青森や岩手など、近県の方言との違いをつかむのに時間がかかったといい、「一番大変だったかも」と苦笑いを浮かべた。

語り部を取材

 自身の想像と現実にズレがないか確かめるため、昨年8月には土崎地区を訪れ、空襲経験者から話を聞いた。加藤さんの取材を受けた同地区で語り部として活動する伊藤津紀子さん(83)は、4歳の時に空襲を経験。自宅から避難するのが早かったため、家族は助かったが、家は跡形もなくなり、隣家の住人も亡くなった。

作品に目を通す伊藤さん(秋田市で)
作品に目を通す伊藤さん(秋田市で)

 伊藤さんは当初、土崎空襲が小説で取り上げられると知り、「なんでフィクションで書くのかな」と戸惑った。脚色が入ることに抵抗があったという。だが、実際に加藤さんに会って体験談を語ると、熱心に耳を傾ける姿に好感を持った。校了前に作品を読ませてもらったといい、「すごく勉強していて、空襲のシーンで直すところはほとんどなかった」という。

 伊藤さんは今回の結果に肩を落としつつも、本作をきっかけに土崎空襲を知ってくれる人が増えることを期待する。「規模は大きくないが、私たちも語り部として地道に活動してきた。小説で光が当たってありがたい。今後も頑張ってほしい」と感謝を口にした。

次作に期待の声

 市内からは、加藤さんの次回作を楽しみにする声も聞かれた。同地区の書店で、昨年10月の発売時から専用コーナーを設けている「未来屋書店土崎港」の古俣良憲店長は、「期待していたが残念。土崎を取り上げてくれただけでもありがたい」とねぎらった。

 書店を訪れた近くに住む会社員男性(40)は「ぜひまた秋田を題材にしてほしい」と次回作に期待を込めていた。

  かとう・しげあき  1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大法学部卒。2003年、「NEWS」の一員としてCDデビュー。12年、小説「ピンクとグレー」で作家デビューを果たす。小説「オルタネート」は第164回直木賞の候補作となり、21年に第42回吉川英治文学新人賞を受賞。

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4950292 0 本よみうり堂 2024/01/20 17:05:00 2024/01/20 17:45:32 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/01/20240118-OYT1I50000-T.jpg?type=thumbnail

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