ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

80年代中期のアダルトソフト事情Part2(前半)~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“80年代中期のアダルトソフト事情Part2(前半)”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


80年代中期のアダルトソフト事情Part2(前半)


方向性を突き詰めていった結果の1つとして誕生した、グレイトの『美しき獲物たち』

『美しき獲物たち』は、画像を35枚程つめあわせたのを次々見ていく画像集。当時ジャストが開発した、音声出力装置「ジャストサウンド」に対応しており、女の子の声が聴けるのが特徴。エロゲーとCG集の境界を考えさせる。

 時は1980年代後半。16ビット機の出荷台数が8ビット機を上回り、PC-8801の背後からPC-9801時代の足音が響き始めていた頃。この時期に活躍したアダルトゲームメーカーのなかにグレイトがあった。「トワイライトゾーン」シリーズ(1作目はアドベンチャーゲーム、以降ロールプレイングゲーム)で知られるが、注目したいのは1986年発売のCG集『美しき獲物たちだ。

 室内で薄着している女の子が身だしなみを整える図や、くつろいたポーズで服の隙間からパンツや乳がチラリとのぞく無防備な図、また女の子同士のペッティング絵などを詰め合わせた内容で、これを第1弾として6作目まで続く人気タイトルに育っていった。

 先に述べた通りアダルトソフトの一側面として、ゲームの手間とごほうびのエロを組み合わせた作りがある。それをもっと簡便に楽しみたいユーザーがいた場合、どう応じるか。ゲーム部分の難しさをゆるめるか、あるいはグラフィックの比重を上げるかという2択になるだろう。そのうち後者をとことん突き詰めると、いっそゲーム抜きで純粋なグラフィック集にしよう、というものが出てくるのも自然ではあった。その点を参照するうえで、グレイトの『美しき獲物たち』は好例になる。


国会で取り沙汰された“177問題”が起こり、アダルトソフトにも自主規制の波が押し寄せる!

 1986年はまた、エロゲーと社会との関わり合いが大きな転機を迎えた年でもある。同年に発売されたマカダミアソフトの『177』が、この年の国会(衆議院予算委員会)で取り沙汰されたのだ。エロゲー史上トップの語り草の1つ、通称“『177』問題”である。

 ゲームの内容は題名の「177」という数字が示している。刑法177条、強姦罪のことだ。形式は横スクロールのアクションで、画面右から左へ走っていく女性キャラクターをプレイヤーキャラがうしろから追いかけ、捕まえるたび服を剥き破り、やがて捕獲・凌辱するというもの。しかもエンディングは、女性キャラが感じたので和姦という体裁をとっている(つまり厳密には、強姦罪を描いたというよりも強姦罪をすり抜けてしまおうという内容)。これにより、単に過激だからというに留まらず倫理的なポイントから社会的反響を招いた。

 最終的に『177』は自粛のかたちで発売停止に追い込まれ、エロゲーの存在自体が顰蹙をかった。

 この出来事がアダルトソフトにもたらしたものには裏表2つある。1つは、作品が社会のなかで市販され流通する以上、商用エロゲー業界は世間からのまなざしを受け止めて、何かしらの回答をもたざるをえないという責任問題。

 もう1つは、注目を浴びたが故に、そもそもアダルトソフト市場というものが存在しておりまだ発展途上だという点が認知され、結果的にむしろメーカーの新規参入も促されたという流れである。エロゲーの歴史はおおむね、過激化→批判を受けて自粛→形を変えて再過激化……というスパイラルで進んでいる。

『177』は横スクロール移動アクション。前方を駆ける女性キャラを追い、障害物をタイミングよく避けながら接近する。本作以前に非正規の裏ソフトで『パスカル』というゲームが存在しており、それを模したとみられる。
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