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ホンジュラスでコカ⚪︎ン中毒者にバッテリー借りパクされたから家に立て篭もって徹底抗戦した話(後編)

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途中マチェーテを返してくれと言われたがこのまま夜になってこちらが眠くなったタイミングで邂逅すると分が悪いので拒否した。なにせあっちはコカインを吸って眠気が消えている可能性があるのだ。

戦場でヒロポン打たせた眠らない兵士と相対するようなものである。こちらは眠らないとダメなタイプである。寝込みを襲われたら勝ち目がない。

ビール缶を傾けながら投石に対して逆に投げ返したりしていたが結局そのまま時間は徒らに過ぎて日付を跨ごうとしていた。これはまずいな。

昨日バッテリー寝ている間によくわからん理由で借りパクされたので自分自身寝ている間にやられると何やられるか自信がない次第である。色々策を練った結果、どこかに隠れて寝ても蚊の攻勢により睡眠不足に陥る可能性が高いので部屋に立て篭もることに決めた。

自分を守る為もあるし、相手の寝床を占領することで相手に睡眠させる機会を与えない戦法である。コカインの効能がどれほどあるのかわからないが少なくともこちらは睡眠確保できれば色々対応できるのでそこさえ死守できればなんでもいい。

そうとなったら準備が重要である。とりあえず部屋の扉と窓に鍵はかけたが相手は薬物中毒者なのでいつくるかもどう出てくるかも分からない。とりあえず山刀を枕元においておくとして、寝ているときに襲来した場合に起きれるようにしなければならない。

扉は2重でロックかけられるような構造をしていたのでそのままにしておいた。この構造だとこじ開けられる可能性があったので扉の前に空き瓶を何個も並べておいた。これなら扉が開いたときに瓶が倒れて大きな音が鳴って目を覚ますはずである。

次に窓である。ここも乗り込まれると分が悪い。鍵はついていたが建て付けが悪く開けようと思えば開けれる感じがしたのでカーテンをしてから部屋に置いてあった衣装棚を窓の前に置いておいた。これなら、こじ開けられたとしても通過するのに苦労するはずだ。物理的にそこにないはずの壁がでてくるように見えるわけだし。

窓は衣装ラックでバリケードを構築
床には瓶を置いておき足が音を立てて着けないようにしてある

後は寝るだけである。枕の下にマチェーテを置いておき臨戦体制だ。いつ起きても対応できる様に靴も履いたまま、コンタクトもしたまま寝ることにした。角膜が傷つくリスクがあるが短期間なので仕方ない。後の時間の大半は蚊との戦いである。昨日も熱帯夜のなか布団をかぶって顔も隠して寝たがそれぐらいやらないと刺されまくる。マラリアやデング熱、ジカ熱、媒介感染症に気を付けることも大事である。

こうして準備は整ったので気持ちよく酒を最後飲み切って寝た。


深夜2時半頃ゴソゴソ言う音で目が覚めた。ハッと目を覚ますと女が窓から侵入しようとしていた。あらら、まぁ棚があるから入れないけど。

押し返して入れない様にして距離を保った後、バッテリーはどこかと聞いたがスペイン語すら辿々しくて何を言っているのか分からない。こいつもなんか薬物やってんな。まともに呂律が回っていない。会話が成立しないんじゃどうしようもない。ただ一つあの男について聞いた時は夫なの〜〜と言うことだけは聞き取れた。

だったら連絡つくだろ。さっさと男呼び出してバッテリー返させろや。そうやって再度侵入しようとするのを拒むと絶叫していたが無視した。そのまま窓を閉めて部屋の中を漁ると段ボールの裏に使わなくなった掃除用のモップがあったのでそれを使って窓につっかえ棒をしておいた。これなら割らない限りは入れない。

20分ほど様子見していたらまたどっかに消えた。虚空に向かって、はよ男見つけてバッテリー持ってくるように言ってこいと言った。ここまできたら近所迷惑など知ったことではない。


今度は早朝4時半頃にまた扉と窓を叩く音がした。が、しかし先ほどよりもセキュリティを増強したのでそれ以上何も起こらなかった。一応何が起きてもいいように臨戦体制でいたが出入り口を完全に塞いだので突破できなかったらしい。

少し扉を開けてまたバッテリー返せや、じゃないとここからは出ていかんと宣告した。それにしても肝心の本人はどこで何をしとるんや。

二度の襲来の後は特に何も起きることはなかった。起きたときには9時を過ぎており爆睡していたことを知った。やはり、どういう状況でもおまんま食べて寝られるって大事な才能なんだなと自画自賛していた。

朝飯を食って水を飲んで待機する。まぁそろそろ潮時やな。返す気なさそうだしこれ以上予定狂っても多分情勢がよくなることはないだろう。

そう思っていると隣の扉を叩く音がした。そっと扉を開けてみると例のコカイン野郎である。バッテリーをはよ返せと言うとちょっと待ってと言って子供の寝ている方の扉を叩き呼びかけ始めた。

反応がないとそこから水瓶の近くに行って脱ぎ始めた。今からシャワー浴びるわ。なんだこいつは。

ここでそいつが裸になったので目を離したのが間違いだった。他人の裸を露骨に見ていいのかこの中米文化圏で知らないが知らない文化圏でへたうたにないと無意識的に避けてしまった。完全にこれはミスだった。

しばらくするといなくなっていた。囚人監視するときにトイレから逃げ遂せるとかよくある話なのにそういうのを失念していた。まぁバッテリー持っていなかったから既に売られた可能性高そうだが。

あ〜戻ってこなさそうだな。ここまでくると勘違いとかではなく確信に変わってきている。発展途上国だと電子機器を手に入れるのが難しい。基本的に冗長性確保のためにライトニングケーブルだけでも6本とか持ち歩いているしバッテリーも20000mAhの物を常時2個は最低でも持ち歩いていた。

だが少しばかり前にグアテマラにてバスの車内に1個置き忘れ今回のバッテリーをなくすと予備がなくなってしまう。30時間かけて登山したり何日もインフラのない世界に行くときにはバッテリーが40000mAhぐらいはないと安全性が確保できない。

バッテリーを失ったのがほぼ確になった今かなり行動制限がかかった現実を認識し始めた。うわ〜うぜえ。

正直金はどうでもいい。もうちょいGDPの高い国だったらすぐ買い替えられるのでさっさと諦めていたがここはホンジュラスだ。周辺国でもてに入れるのは難しいだろう。買いに行くならどっかで旅行を中断してアメリカか西欧あたりに飛んで買わねばならない。バッテリー自体は7~8000円とかでしかないが往復の航空券や機会損失を考えると数十万円程度の損害では済まない計算である。

コカインぐらい買ってやるからまじでくそうぜえ事してんなよとマジでイライラしてきた。バッテリーをとった割に他に持っていたMacbookとかは取られていないのもよくわからない。(盗られていたらこのnoteを一週間で出すことはできていない)

ああああああ、うぜええええええ。こう言う地味なうざさの方がイラつくんだよな。身包み剥がされていた方がある意味諦めがついていた気がする。

こんな次第だったし、これ以上先延ばししたところで事態の改善は見込めない。そろそろ飽き始めていたのもある。なので最終通告することにした。

子供達も被害者かもしれないが通告だけはどうしようもない。姉と弟は俺の話を聞いてなんともいえない困惑した表情をしていた。が、続けた。今日中にバッテリー返ってこなかったら警察に行くわ。これをあの男に伝えておけ。どうせ連絡つくんだろ。

結局あの男が兄夫婦なのか両親なのかよく分からなかった。昼間は外に行って返ってこないし親をやっている様な感覚が一切感じられなかった。

とりあえずまぁそこら辺はバッテリーさえ戻ってくればどうだっていい話である。人の家で立てこもっていて予定が狂って暇だから色々想像したくなるだけだった。

仮に父親だったらこいつら大変だよな。両親共にコカイン中毒で母親は少なくとも物乞いである。父親も何しているかわからない。少なくとも俺のものを借りパクしたまま売り飛ばしてコカイン買うような人間である。

こういうのを見ると自分自身がかなり恵まれた家に生まれて育てられたことに感謝せずにはいられない。一時期父親がリストラされて貧困だった時期があるがそれでもヴァイオリンのレッスン料だけは将来のためとやりくりして払ってもらったのを思い出すと落差で少し悲しくなった。

とはいえ、同時にここはホンジュラスである。世界でも殺人事件がトップクラスに多く、そのうち90%以上が闇に葬られる、政府も軍隊などを使っているが追いつかず銃所持を合法化して自らの身を守れと言っているような国である。

これは完全に自力救済世界である。近代法が発明される前の中世時代の価値観だ。自分の身と自分の財産は自分で守らねばならない。舐められたら身ぐるみ剥がされる。やられたら徹底的に報復をしなければならない。

報復

治安警察や裁定機関がまともに機能していない近代法の支配のない自力救済社会でなら人のものを盗んだら手を切り落とすぐらいの報復が妥当であるがさすがにそれはどうかと思うので徹底的に嫌がらせをして報復することにした。


麻薬関連となると警察すらギャングから賄賂をもらって腐敗している可能性があるため下手にお上駆け込んだところで寧ろより事態を悪化させる可能性出てくるのは得策とは思えなかった。麻薬カルテルのシマを荒らして個人的ないざこざが組織に対する敵対行為にとらえかねない状況に持ち込むのも分が悪い。

バッテリーが手に入らないことによる機会損失を考えるとかなり大きい。平均年収30万円のこの国で貧困層となれば年収数年分の代価を払わせるのが妥当な報復である。

そうやって考えると麻薬カルテルが物取り犯の手を切り落とすと言うのは金銭ベースだと妥当な指標なんだろうな。資産を持たぬ者が差し出せる物は限られているので。まぁただ僕もそこまで鬼ではないのである程度で手打ちすることにした。

ということで相手の家にいるという状況を利用してインフラ環境を破壊することにした。手始めに手元に残っていたビールとコーラをベッドにぶちまけておいた。コーラはもちろんオリジナルである。ベッドマットの中に糖分の入った水ぶちまけたらまずそう簡単には洗えないだろう。1Lちょいは残っていたので結構水浸しになった。

ついでに電球とガラス瓶を布団に包んでマチェータを振り下ろしてガラスの破片を作った。細かいガラスは毛布やベッドに刺さると一個一個取り除くのは面倒である。

次やったのは配線の切断である。壁コンセントの外側の蓋を外すと中に本体が壁にネジで固定されている。これを山刀の先端をドライバーがわりにして外した。そうすると3本の線が出てきた。2本が交流電源の配線でもう一本は呼び線と呼ばれるものである。

これをできる限り引っ張り出し根本から切断した。配電盤で電気を落としていないので少し感電したが一本ずつ切ってテープで絶縁したのちブロック内に押し込んだ。呼び線は力ずくで引っこ抜いた。

基本的に壁の中に埋め込まれた配線はパイプや呼び線と言われるもので外部から室内へと通している。手の届かない壁の中で配線を動かせるのはそういう仕組みである。これがないと壁自体を壊さないと電気ケーブルを引っ張って来れないのだ。

この家はコンクリートブロックを積み上げて表面をセメントで固めた構造なので呼び線ごと引きちぎったら壁の中の配線を再び通すのは家を建て直すしかない。木造家屋で石膏ボードで壁を作っているならまだ壁を剥がすだけで済むが壁と家そのものが一体化しているのでそれはできないはずだ。

次はドアノブを分解した。幸い蝶番もついているので1個は鍵がつけられる。分解している休憩中に持っていた塩コショウを水に溶かして飽和食塩水を作る。そして中の構造部の中に食塩水を流し込んだ。メッキや合金処理されているだろうからどこまで錆びるかは不明だが、最悪この熱帯地域ではすぐに水が蒸発して塩の結晶ができて可動性を阻害できるだろう。

次に外にあった日曜大工用と思われるセメントを持ってきた。ここにティッシュペーパーを用意する。トイレの中に両者を放り込み流しては同じことをくり返した。トイレットペーパーですらトイレに流したら詰まる世界ならどっかで詰まるだろう。

仕上げに部屋の中に落書きをすることにした。落書き自体はペンキで消せてしまうが見た瞬間はうっぜ〜〜〜とイラつかせられるだろう。何よりその後次々に判明するインフラ破壊の前菜には必要である。

部屋で使えそうなものを探していた時にマッキーのマイネームペンが落ちていたのでありがたかった。まさかこんな所で日本製の文房具を使えるとは思えなかった。ありがとう日本。

使えるかどうか不明だったからまずは扉に落書きして確かめてみることにした。最初に書いたのはLa Putaである。そう『天空の城ラピュタ』のラピュタである。

La Puta (売春婦)ほ

天空の城ラピュタのラピュタはガリバー旅行記に出てくるラピュタ王国から取られているがスペイン語では売春婦を意味する罵倒語でもある。直接いう機会は今までなかったのでようやくこの用語を使える時が来た。英語でもスラング使うようなことまずないから別言語となればさらに貴重な機会である。

落書きをしてきたらコカイン野郎が帰ってきた。初っ端からキレていて扉を激しく叩いてきた。「お〜まだこの家の内情見てないのにこの様子じゃぁ最初から返す気はなかったようだ、俺のバッテリーは売られてコカインの購入資金にでもあてられたんだろう。

枕元に書いた""強盗""の文字

そうしている間に裏手から回って窓から入ろうとしてきた。カーテン越しに対応してバッテリーはどこやと声を張り上げ入口側に誘導した。

途中からの不誠実な対応としらばっくれた態度にこちらも業を煮やしていたところなのでちょうどいい。いざ鎌倉じゃい。他の持ち物はすでに荷造りしていたので準備満タンだ。

扉を開けるとかなり興奮した様子である。またコカインやったのかなぁ。とりあえず銃は相変わらず持ってないようだ。これなら問題ない。銃さえなければなんとでもなる。お金を手に入れるとすぐコカインに投じるのだろう。

いつまでこの家にいるんだみたいなことを言っていたがそれはおかしいだろ。さっさとバッテリー返せば気持ちよく長居することなくお別れしたのに。なんならお前俺の金借りてコカイン吸いまくってたよな。家に帰ってきたら返すと言ってたのはなんなんや。

そんなもんは知らん。そう突っぱねた。まぁそうだろうな。やはりこの展開になるんだ。コカインをやっているが心優しい現地人との交流みたいなハッピーな展開では終わらなかった。

残念だなぁ。そうやってお互い怒気を含ませながら押し問答していると胸ぐと腕を掴んで出ていけと言われた。これ以上引っ張ったところで状況が改善する見込みがなかったのでさらに怒らせることにした。

「よし、警察に行こうぜ」

彼が何よりも恐れていた警察である。まぁこちらも裏で繋がっている可能性があるので行く気はなかったが口撃としては申し分ない。彼の腕を掴む力が強くなったのを感じた。

よし、予想通り。上半身は裸で掴む袖がなかったので勢いをつけて相手の腰のベルトと腕を掴んで投げ飛ばした。

よし!!!!!!!!!綺麗に大腰きまったあああああああああああああ!!!!!!!!!!!

あとはとんずらコクだけだ。相手は綺麗に投げ飛ばされて受け身取れなかったから起き上がるのに時間がかかっている。さっと荷物を担いで道路側に走った。20mほど走るともうたどり着いた。警察が検問を張っているのが見えるのでそっちに走って行く。

後ろを振り返ると追いかけてくる様子はない。綺麗に投げ技決まったしな。

外国人とタイマン張る時はやはり柔術は便利である。僕は腕っぷしには自信あるが殴り合いになるとチビなので分が悪い。その点柔道は掴みかかられても使える。みんな投げられたことがないので油断しやすく受け身の取り方も知らないので気づいたら宙を舞って平衡感覚が狂って次の行動が遅れる。その間に走って逃げるのが手っ取り早い。

そんな感じで家から離れてくるが追いかけてくる気配は全くない。一応警察に事情を説明したが検問の警察官は不法入国外国人や麻薬の運び屋を取り締まっているだけなので管轄は違うようだ。

こちらも返ってこないものにこれ以上時間を割くのは癪なのでここで切り上げることにした。まぁ、中米でまともにかえなさそうなAnkerのバッテリー失ったのかなり痛いが、最終的にちゃんとそれに見合う仕返しはしておいたのでここらで打ち切りである。

コカイン使用や購入場所なども写真や動画で全て証拠は持っているがこれを警察に持って行ったところで警察自体が麻薬カルテルから賄賂をもらって繋がっている可能性があるのでリスクが高い。

それにシマ荒らしや密告はこういうヤクザみたいな暴力組織が1番嫌う行為である。あくまで今回の件はコカイン中毒者の兄貴と僕自身の私的な争いであって、ここから警察に行って麻薬の販売ルートを潰してしまうと個人対個人から、個人対組織の話となってしまう。

中米の人たちの大半が優しい人だとしても麻薬カルテルから警察から全てを敵に回すのは流石に厳しい。やはりここが引き際であった。あとはこの都市を離脱するだけだ。昨日行き先を告げているので追っかけてこれるが宿泊する場所とかはてきとーに濁しておいたので追いかけるのはかなり難しいはずである。何よりコカインを買うために人のバッテリーを借りパクして売るようなやつである。よくわからない目的のために貴重な購入資金をバス代に使ったりはしないだろう。

バス停には人がワラワラおり安心した。こういう場所ではスリやひったくり、ケチャップ強盗に遭うことはあってもさっきの続きが繰り広げられることはないだろう。待っている間に一仕事を終えたあとの栄養源としてチキンを買って食べた。

そうこうしている間にバスが到着して無事コパンの街へと脱出した。

コパン遺跡へと脱出

人の家について行くと面白いことが起こるんだよな。途中から暇すぎてイライラしていたが終わってみれば自力救済社会を満喫できていて楽しかった。徹底的にやり返したので人の物盗むことに多少は懲りただろう。

やはり海外旅行は””知らない人に着いて行く””方が面白い経験ができるのだ。これからも積極的にチャンスは掴んでいきたい。



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